かなり世界観が深くシリアスな作品でした
とにかくラブラブ!恋愛もりだくさん!主人公はお相手の最大の理解者!必ずみんな幸せになれる結末!
というものを求めてる人にはあまり向いていない作品かもしれません。
ただ、そこを差し引いてもとても難しい課題や世界観、根の深い問題に容赦なく突っ込んで、かつご都合主義ではなくリアルな感情や展開を描かれていると思います。
少なくとも安易なハッピーエンド、安易なバッドエンドがあまり好きではない私は良い作品だと思いました。
確かに「相手と自分が違うことを受け入れる」という根本的なテーマが一貫されていたと思います。
恋愛が主体ではなく、恋愛表現も含まれる、あくまでテーマに沿ったゲームといった感じです。
=====以下、ネタバレ注意=====
以前より「乙女ゲームはカウンセリングゲーム」とたまに言われてますが、この作品は逆の解決をしているところがありました。
完全に理解しあってお互いにまったく同じ気持ちで寄り添うのではなく、互いに違う人間なのだから相容れないのは仕方がない、それでも相手を大切に思って尊重して付き合う、という大変現実的な関係の作り方です。
人種による差別問題やトラウマ、体質、それによる関係の限定された作りかた。
作中の台詞で特に印象的なものが「君はボクの救いじゃなかった」です。
これの作品の魅力はこの概念に尽きると思います。
相手を救えない、相手に救われることもできない、理解できない、理解できても納得できない。それでも一緒にいられる、失いたくなくて大切。基本的ですがなかなか難しいことです。
よくある話なら主人公が相手を理解したり相手が救われることでハッピーエンドにいける苦難が、そのまま「違う」という現実と向き合って、「違う」まま大切にするという選択がとても好きです。
作中で唯一(?)主人公のユユちゃんに対して恋愛感情を表に出しているルーくんでも、境遇の重なるところがありながら「人間だから」受け入れてもらえない、「幸せな亜人だから」と暴力的にしてしまっていた環境が返ってきてしまう。ユユちゃんと仲の良かったミツルくんだったら「ハーフだから」受け入れてもらえる、というやるせなさ。
それでもユユちゃんはルーくんが殺人鬼かもしれないと忠告するミツルくんよりもルーくんを庇ったし、ルーくんもユユちゃんからもらった優しさを大切にして感情を遠回しに伝えている。
そんな二人の結末がとても愛おしかったです(だからこそモト先生√の彼の行動やその結果が悲しくもあるのですが…)
「君と自分は違うから完全に理解はできない、それでも大切に思っている」というリアルで複雑な感情をしっかりと書き上げていて、モト→テオン→ルーの順番に全エンド回収した後の満足感も大きかったです。
ミツルくんがルーのエンドで疎遠になってしまってそのままだったのが、モト先生の√での真摯な彼を見ているだけに少しさみしくもありましたが、彼の存在はルーくんにとってあまり良くないですしね…
完成された素晴らしい作品をありがとうございました!
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