■作品の感想
「特殊流星体干渉性一時健忘症」
この物語は複数の要素から成り立っている。
「特殊流星体(隕石)」が干渉して起こる一時的な「健忘症」である。
もっと細かく要素を分けると
「特殊流星体(隕石)」+「反存在の石(ドロップ鉱石)」+「健忘症のカウンセリング」+「ホヅミの記憶の内容」
健忘症の原因はいろいろあるだろうが、
本作の主人公は少年。ただの物忘れではない。
そしてその原因には「特殊流星体(隕石)」が関わっているとのこと。
「特殊流星体(隕石)」というフィクションを通し、少年の記憶を辿る。
このワンクッション置いた仕掛けにより重くならずミステリアスな雰囲気が作品を包む。
とは言え「反存在の石(ドロップ鉱石)」で記憶を取り戻すシーンでは、
上記の要素全ての設定が一気に絡んで来るので、
初見では情報量が多く理解が追いつかないこともあるだろう。
実際、僕は2回目を読んで理解できた。(つもり)
カラカラン。
「反存在の石(ドロップ鉱石)」を選択する際の効果音が良い響きだった。
また、それらをプレイヤーが選択するのも、能動的に記憶を取り戻す感じが表現されていた。
明かされた記憶は向かいに座るイクシマにも伝わる。
ホヅミとイクシマ、言葉は無くても物語を共有できる。
短い間だったが軽口を言い合うほど2人の信頼関係は育ち、
だからこそホヅミは次の治療へと進んでいく。
その描写は見事。
やがてホヅミは自分自身を取り戻していくだろうと、我々は確信できる。
爽やかな読後感。良いだろう。
■「特殊流星体(隕石)」と「反存在の石(ドロップ鉱石)」についての考察。
「特殊流星体(隕石)」の設定:相性の良い人間の感情や記憶を奪うことがある。
実際の若年層の健忘症はその原因はストレスやショック等が大半であろう。
この作品では、フリゲとしてその「重く」なってしまうポイントを、
「特殊流星体(隕石)」の設定を使いマイルドにし、
同時にミステリアスな雰囲気に導いていた。
とはいえ本当に必要な設定は、これと対をなす、「反存在の石(ドロップ鉱石)」の存在だろう。
「反存在の石(ドロップ鉱石)」を使用して「特殊流星体(隕石)」から対象者の記憶を取り戻す際、
向かいの感応者にもその内容が100%伝わる。
実際のカウンセリングもカウンセラーとの会話を通し進むのだろうが、
言葉だけでは限界があるのも事実。
そのような障壁も完璧に取り除けるのがこの「反存在の石(ドロップ鉱石)」だ。
他者に自分を理解してほしい、誰もが望むことだろう。
そのような想いからこの「特殊流星体(隕石)」と派生する幾多の設定、
そしてこの作品が生まれたのだろうと思う(個人の感想です)
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