Ver1.00
クリア時間　47分(理エンド)
　　　　　　+2時間30分(鍵CAEDBもう一つのエンド＋後日談含む)

中学2年生の月下羽衣は幼なじみの探偵である灯木洩日が
自分に何か隠し事があると直感し、その証拠集めのために
3日間、2人で町内を遊んで回る……のではなく調査をする推理ADV。

システムについて、時間帯ごとに異なる6つの調査場所から
1つを選択すると会話イベントが発生し、
そのイベント中で何かしらの手がかりを入手できる。
それを午前、お昼、午後の3回行うと1日が終了し、手がかりから共通項のありそうなものを
選択し、共通項があれば鍵を入手できるイベントが発生し、なければそのまま一日が終了する。
この流れを8月14日から16日までの3日間繰り返しあるエンディングに到達する、というものである。

調査できる場所が6つなのに対し、3日しかない以上、1周のプレイでは半分しかイベントを
見ることができない。そのため、周回が当然のゲームであり、
最初に必ず見る理エンドではとある謎(真の事件ともいえるかもしれない)が提示されているため、
その謎を解くために周回をするようにもシナリオ上で誘導されている。
システム的にもOPEDはスキップ可能で、前の周回で一度でも調査した場所には
何の手がかりが入手できるかが表示されると、周回がしやすいようにも作られており、
このゲームはツール標準のセーブ機能が一応ついているが、自動セーブされているのに近い仕様なので
あまり必要なくなっているのも非常に遊びやすい。

6(場所)×3(時間帯)＝18の手がかりが存在していて、
そのうち3つはロックドヒントと呼ばれるもので、真相を解き明かす上で重要な手がかりなのだが
鍵を全て入手するまでは組み合わせることができない。
残りの15の手がかりから3つ組み合わせて鍵を入手していくのだが
手がかりにムダなものは存在せず、重複して使用するものも存在しないことから
分かりやすい手がかりから組み合わせていき、基本的に消去法で最後は組み合わせることになると思う。
(有名な推理ゲームで例えるなら逆○検事のロジックの3つバージョンといえば通じやすいだろうか)
トリックを解き明かすのではなく、様々な情報がいったい何を意味しているのかを
考える、厳密な謎解きではないがいわゆる「日常の謎(日常ミステリー)」に近いジャンルといえる。

この推理システムの印象的な部分として
食べ物を組み合わせればいいということ自体はすぐ気づけると思うのだが
食べ物の手がかりを入手できるイベントの2つが時間帯で重複しており
実は1日で入手できないようになっているのは、簡単になりすぎないようにしたように思った。
また、午後の調査場所には？？？と表記されて選択できないものが存在しており
これだけは、午前とお昼に特定の場所に行った場合にのみ出現する。
3つの手がかりのうち、2つしか基本的に入手できない組み合わせであり
これらの共通項も想像しにくいものなので、おそらくこの鍵が最後になる可能性が高そうである。
(おそらくヒントがあるとしたら木洩日君がこれらの手がかりにどういう行動をとっているか)
ただ、こういった仕様になっている理由はこの鍵の入手イベントや
シナリオの全体を俯瞰すると非常に納得のいくものになっているのもまた面白い部分に思う。

シナリオについて、調査段階のそれぞれのイベントにおいて
羽衣ちゃんがボケて、木洩日くんがツッコむコミカルな会話が多く全体的に楽しい。
羽衣ちゃんが元気少女という以上に木洩日くん大好き少女で
(>▽<)みたいな顔よくして楽しそうにしてるので
気持ちいいくらい可愛いキャラになっている。
幼そうな見た目と裏腹に、木洩日くんの面倒を見たいというか可愛がりたいというか
実は男の子好きのお姉さん属性に近い気質にも思う。
そして木洩日くん、クールで頭の良い少年なのもあって
羽衣ちゃんの好き好きアピールも現実的にかわしていく。
似たようなフレーズを3回くらい繰り返して対応するのが
小気味よいリズムのセリフになってて面白く
たまーにデレたりもするので木洩日くんも中々に魅力的なキャラをしている。
なんだかんだで木洩日くんも内心では羽衣ちゃんを好いているのが分かるので
安心して見られるイチャイチャが多い。

調査段階で1つ個人的な好みのイベントを挙げるなら
木洩日君のベッドにダイブしてそのまま眠ってしまった羽衣ちゃんに
木洩日君が穏やかな表情を浮かべているイベントだろうか。
羽衣ちゃんがヘンタイやっているのも面白いんだけど
木洩日君のツンデレのデレがここに極まるという印象もある。

表面的にはゆるゆるイチャイチャ日常ものゲームという印象だが
エンディングは基本的にシリアス路線で、本編がゆるめだった分、
温度差はかなりあるかもしれない。
特にロックドヒントによって解放される解決編といってもいいエンディングは
かなり衝撃的な事実が明かされる。ただ、本作はそこからどう解決するかという流れは
熱い展開と言ってもよく、微笑ましい可愛らしいやり取りをしていた主人公が
自分なりに過去や周りときちんと向き合って、自分のやるべきことを行うことで
最終的に解決を迎えるのだから、とにかく主人公がカッコイイ。

解決編はプレイ時間にして1時間30分はかかる内容なので
少しボリュームはあるが、今まで集めた鍵に隠されていた伏線が回収され
きちんと今までのストーリーにも意味があったと納得できる内容だったので
それだけの時間をかけてプレイする価値は十分にあるといえる。

テキスト自体も面白いのだが、シナリオの全体構成、伏線の張り方は
本当に無駄な要素がなく巧みで、細かい設定にも何かしら意味があって驚かされた。

本作が「本格推理ではない」と説明文で書いてあるのは
日常パートがゆるふわなのもあるのだけど、解決編において妖怪要素が絡んでくる関係もあり
全貌を推理するのはほぼ不可能だからでもあるように思った。
ただし、「木洩日君の隠し事は何か」という冒頭の問いに関しては
作中で本来、存在しているはずのものが意図的に描写されないことから
そこに重大な秘密が存在していることくらいは推理できる。
予想不可能ではあるが今までのシナリオときちんと整合しており、
予想不可能であるがゆえに、ストーリーとして面白いと感じた部分もある。

木洩日くん大好き系元気女子と、クールなツンデレ少年のゆるふわやり取りを楽しみながら
その日常の中の隠し事を推理する一作。
コミカルなテキストを楽しみたい人や、キャラの行動や言動からその意味を考えるのが好きな人、
細かい伏線が最終的に回収されるのが好きで、予想外の展開が好きな人向けの良作といえる。
あまり詳しくは書けないが、妖怪的な話が好きな人にもおススメである。

※ネタバレ部分は割愛。

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良い意味で、全部が期待以上に楽しめました。いちゃいちゃ要素もシリアス要素も想像以上、ゆるふわなのに超濃厚でした。
すばらしい作品でした。

＜キャラクター面＞
木洩日くんと羽衣ちゃんのふたりの掛け合いがとても明るく、ほほえましすぎます…！
特に羽衣ちゃんのまっすぐな好意はまぶしく、"ツンデレ"探偵のリアクションもちょっとクールぶってるけど突き放しすぎない塩梅。
この掛け合いだけでずっと見ていられるくらいのテンポ、雰囲気です。

＜システム面＞
ゆるやかにつながる証拠を集めて推理をするパートと探索要素が没入感を高めてくれます。
決して簡単すぎず、でも難しすぎないこの仕組みもわくわくしました！
ちょっとした周回要素ありますがそれも全然手間に感じさせないです。

＜特に好きだったところ＞
・何より、文章とイラストの演出や表現の緻密さを感じました。細かいところまで見ればみるほど意味を見出せるような丁寧さがあります。
・ストーリー展開のさせ方が巧みだと感じました。日常の事件から、示唆されているシリアス要素が入り込んでくるとどんどん展開が変わっていき目が離せないです。

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　クールな木洩日くんと、明るく元気いっぱいホットな羽衣ちゃん。
　二人のゆるふわな掛け合いでほっこりする……と思いきや、要所要所で気になる伏線が含まれていて、気になって全エンド見ました！

　各エンド自体も、まさか最後にこう集約されるとは思っておらず、驚きながら読み進める事ができました。

　お話だけではなく、作りこまれたUIや可愛い絵柄も相まって、色々なところで楽しむ事ができました。
　持ち物画面の黒板？に書かれている内容と、鈴生くんの怖い顔が個人的に好きですｗ

　ぜひ多くの方に、真相エンド後のタイトル、タイトル画面、そしてCGモードを見て頂きたいです。

　二人がこれからも見つめ続けられたらいいな……そう思える作品でした。

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