いいねと引き換えにされる命
承認欲求をこじらせた中学生が、ついには自分の死まで見世物にしてしまう掌編ノベル。
要約するとこれだけの話だが、その選択に至るまでの経緯は過不足なく丁寧に
描写されていて、展開に引き込まれる説得力があった。
自殺を配信する男子中学生、藤田の心理は分かり易く語られている。
語り手である同級生 高槻によると、藤田は学校では真面目な優等生だったらしいし、
「他人がこうあって欲しいと思う人間」であることが自分の存在価値だと感じる
価値観が心の奥に染み付いていたんだろう。
そういう生き方から脱却したくて、自分の好きなものである小説で認められたかったが
あまりの反応のなさに打ちのめされ、手軽に大きな反響を得られるエロや
プライベートを切り売りする底無し沼にハマっていったと。
だが、賢しい藤田はそんなやり方がいつまでも続けられるわけがないと悟っていて、
人気が絶頂のうちにより多くの注目を集める形で消えたいというわけだ。
結局彼は他者が望む自分であり続けるという呪縛から逃れられなかった。
ネット上の人格に命までかける価値があるのかと普通なら思うし
実際作中でもそういう言葉は出ているが、当事者にとってこれほど切実な問題もない。
現実にもいいね!を集めるための行為で死に至るケースは掃いて捨てるほどある。
良識ある忠告や中途半端な同情は、その力の前にあまりに無力だ。
高槻の「死んで欲しくない」という言葉も本心から出たものではあるんだろうし、
もしももっと早くに仲良くなる機会があって 友情を育めていたなら
自殺を思いとどまる理由にもなったかも知れない。
しかし、現実にそんな関係はなかったわけで、
芽生えたばかりの友情が藤田の居場所たりえるはずもない。
画面の中の彼は、高槻にとってあまりに遠い存在だった。
そんな事実をきっちりと描いた結末は、暗いながらも一本筋が通っている。
一応BLというジャンルであるから、リアルに考えればそれはないよ、という
ファンタジーな要素もあるが、そうでなければ描き得なかったテイストでもある。
女子だったら15歳で性的消費される存在でなくなることはないからね……。
むしろそれからが本番で、期限を過ぎた年齢になっても承認欲求こじらせたままだと
それはメンヘラと呼ばれる人々の話になって、主旨がかなり変わってしまう。
自らの存在理由を追求した末に死ぬ、という選択をした少年の純粋さと
人の思いを無為に消費していく社会のグロテスクさのコントラストが映える一作。
藤田の口から最期に出る「あぁ 死ぬの怖いなぁ……」という一言が切ない。
すごい
かなり、センシティブな内容なのですが、それを非常に丁寧に繊細に言葉にしてらっしゃるので、「すごい…」としか……。演出が素晴らしいです。
自殺、ダメ、絶対。
そういうの怖いもの見たさで見たことありますねぇ(;^ω^)
今回も特殊な人の心理が上手く描かれていて興味深かったです
最後の演出もイイネ!( ・∀・)b
少年は神になる為に
今回も鬱くしかったです。高槻君のビジュアルめっちゃタイプです。
※ここからネタバレ
藤田君はどんな創作をしてるのかむしろ気になりました。
創作って無名だとインパクトとタイトル勝負なところあるし
一喜一憂するのも仕方ないよなあ。
藤田君の神になりたい、っていうのは自分にはその気持ちは分からなかったけど…
承認欲求や自己顕示欲、そして自己愛なのかなと。色々な人に称賛されたい、みたいな。
年齢が年齢なのでそういった感情が肥大化するのも無理ないと思う。
なんか遊んでて辛くなってくるモンがありました。
藤田君は神になりたいと思ってるけど、おじさんからしたら
性的対象の消耗品でしかないんだよね…
だから藤田君は老けるのも嫌だし
そこにしか存在証明できないから性にすがっちゃうというか。
神は神話になるけど性的消耗品は一時的だし…
いやそれがイヤで神話になる為に自殺配信だったんでしょうね。
これラストどうなるんだろう。やっぱ死ぬんかな…と思ってたらアアアア…。
エンドロールもオシャンティーでした。
高槻君の言葉は高槻君の中で完結してて、
藤田君には藤田君の「そう。でも僕はそう思ってない。違うんで。自分でもう決めてるから」
みたいな意志があるエンドはリアリティあるというか、良かったです。
これむしろ逆に「そうか、高槻君が言うなら自殺やめようかな」ってなって
フラフラしてヘンな方にハッピーエンドになると違和感バリバリでおかしくなるというか
「オイッ君の経験と自殺配信覚悟はそんなもんだったのかい?」
てなるし納得できるビターエンドでした。
さくっとプレイできるし、鬱気分になりたい方、おすすめです。
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