偶然もまた、いつしか必然に感じて……
【総評】
勇者二人と獣人の三人パーティーが冒険する様子を描いた、
オムニバス形式(股旅物みたいな形)の短編ノベルゲーム。
普通のRPGが劇場版『クレヨンしんちゃん』だとしたら、本作は
定期放送の通常の『クレヨンしんちゃん』といった感じの趣きで、
勇者たちの日常が描かれている独特なスタイルが新鮮でした!
以下、クリアした後のプレイ感想です。(※ネタバレなし。)
【長所】
・沢木耕太郎の『深夜特急』が、一人旅ではなく男三人の旅で
ファンタジーが舞台になったような、そんなプレイ感覚でした!
それぞれ違う過去を持つバックパッカー同士の旅、みたいな。
・明るさの中に、どこか退廃的というか刹那的というか、そんな
儚さが見え隠れしており、ちょっとしんみりとしました。ピアノを
基調としたBGMも、そうした雰囲気づくりに一役買っています。
・男同士のベタベタしすぎない関係、でもお互い認め合っている、
そんな感じの薄味のムードや描写が素敵でした!
【短所】
・迫りくる異形の者とか流血ブッシャーとか、そういった刺激的な
描写が中心のゲームではないので、「ノベルゲーム=ホラー」
という前提でプレイしたら、恐らくガッカリするかと思われます。
特になにかあるわけではないけど何かは考えていたのかもしれない
※ネタバレあり
短編ノベル集とあるように読むだけゲーですが、各地の街に移動して好きな話を選択できるのが案外見ない気がする構成。個人的には初見で遊ぶよりは勇者シリーズ本編(レストが主人公のやつ)をどれか一つくらい遊んどくとより入りやすいかなーって思いますが、一つ一つが短く文章も簡潔で読みやすいんで単体でもファンタジー短編集として入りやすいと思います。
勇者シリーズとしてはしっとりした音楽と文章も相まって、いつもより真面目な印象。普段はあえて削ってそうな感じの作品舞台の重めな裏事情や裏設定、キャラ同士の関係や心情の掘り下げなんかも見れて、ところどころでしんみりしました。「野宿の森」の仲良さそうな三人とか、レストの過去が垣間見える「ネモフィラの花」とか。
花モチーフの話が全体的に綺麗でしたね。「花言葉」はクロムが可愛いと同時にオチが上手いですねw
フォッグとクロムの関係が思ってた以上に微笑ましかったな~って思います。野宿やケーキの話のやり取りがかーちゃんのような兄弟のような。
最後の普段らしからぬ終わり方も余韻があって良かったんですが、作中でこの旅っていつまで続くのか的な事を言ってたこととか最後二人きりだったこととか考えると三人はどうなってしまったのかなーとか色々考えてしまいますね。
作者の方のノベルゲーの方も楽しませてもらったので、今回勇者シリーズでもノベル読めて楽しかったです。
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