モラトリアムをもうすこし

「ずっと今が続けば幸せなのに・・・」 ーーなら、なぜそうしないんですか？

　「ずっと今が続けば幸せなのに・・・」

ーーなら、なぜそうしないんですか？

「だって、それでもよりよい未来に期待して努力するから人は成長できるから」

ーー本当に、そうしたいんですか？

「え？」

ーー期待すればいずれ裏切られる。たとえ期待が叶ったとして、そうしたらまた更に何か期待するのが関の山。

それを続けていけばいずれその期待が叶わない時が来る。

誰かに何かを期待すると、いずれ必ず裏切られる時が来ます。

期待を裏切られるのは、辛いことじゃないですか？

「・・・」

ーー成長なんてもの、そんな苦痛を何度も味わってまで得る価値のあるものなんですか？

驚いた。あなたはそんな向上心のある人間なんですか？

「僕は・・・確かに、苦痛と成長なら、苦痛の少ないほうが幸せを感じられるかも知れない・・・」

ーーそう、そしてそれはあなただけじゃない、みんなそうなんですよ。

あなたは特別な人間じゃない。勿論、私だって特別な人間じゃない。

だから、だからこそ、私たちの心は、きっと誰にだって同じものなんです。

「そう、かもしれない」

ーーさあ、私の手を取って・・・　みんなの幸せを叶えましょう。

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魔法少女。毎晩、現実の肉体を離れ魔法少女として活動する凡庸な人間ども。

彼女らは「こっち（魔法少女としての時間）こそが現実なんだ」と笑いあう。勿論、冗談として。

でも、その冗談には悲痛な願いが響き渡っている。

彼女らは皆、どうしようもない現実に悲鳴を上げている。

彼女らは知っている。魔法少女としての日々がずっと続くわけではないことを。

魔法少女であるためには魔力が必要だ。でも、それは無から湧き出るものではない。

夜目覚め、人を襲う魔獣。それらを狩ることで魔力を得るしかないのだ。

魔獣は倒してもいずれまた生まれる。でも、もう供給が追い付いていないんだ。

魔法少女はだいぶ増えてしまった。このままでは魔獣の奪い合いになる。

負けた者は魔法少女でいられなくなる。

そんなのは、厭なんだ。

苦痛で仕方ない現実からの唯一の逃げ道、それを喪うのは。

だからーー