世間で普通と言われている、恋愛や結婚といった価値観に染まれない女性、
八千穂と国花が話し合うという内容の短編。
恋愛感情を持ったことがなく、異性に夢中になる自分が想像できないと言う二人を、
無性愛者と呼ぶと異常なように聞こえるが、実はこういう感性を持った人は
昔から一定の割合でいたのではないかと言われている。
ただ 近代以前は家同士の関係や経済的な事情から結婚することが当たり前だったため、
恋愛感情が無くても家庭に入り子孫を残してきたということだ。
人類の歴史としてはごく最近生まれた「人は恋愛した相手と結婚すべき」という思想が
深く根付き過ぎて、多くの人間が疑問すら抱かないのは、現代の歪みの一つだろう。
テレビや広告は、恋愛や結婚を至上のものであるかのように喧伝する言葉で溢れていて
外側から見れば強い違和感を覚えるのも無理はないと思うが、
そういった考えを表立って口にすれば周囲から孤立していく。
何が幸せかという世間の価値観と自分の考えはズレていて、将来への不安もあって
自分がどうすればいいのか、生き方を変えなくてはいけないのか、
そんな心中を二人は話し合う。
二人の悩みの内容は、実に現代人らしいと思う。
前述したように昔から無性愛者はいたけど、選択の自由がそもそもなかったので
その事について悩んだ記録は少なくとも表立ってはあまり残っていない。
だが、現代では恋愛や結婚をしなくても自分なりの生き方を選ぶ余地がある。
それだけならいい事だが、選んだ結果に責任を負うのも自分だ。
絶対的な答えなど存在しない事に「これでいいのか」と
迷ってしまう事は、現代に生きる人間の宿命である。
同作者の作品は、悩みの中にある人間を描いていると言う点で共通しているものが多いが、
問題に対して強い言葉を使って結論付けずに、悩みや不安定さを抱えたまま生きていく
姿勢はどの作品でも一貫している。
独断と偏見を持って言い切る、悪く言えば自分の考えを押し付けるような作風の方が
分かり易いし、この時代には多くの支持を得やすい。だが、この作品は
そんなにはっきりと割り切れない問題を掘り下げて、迷いを残したまま生きるしかない
人間の心理を全うから書いている。
はっきりと何が正しくて、何が間違っているという答えがあるなら楽だろうが、
はっきりとした答えを出しようがない自分がいる。
そんな孤独の中で、同じ悩みを抱えた者同士として寄り添う二人の姿が心に残る。
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