嘘の自分も本当の自分
ウミユリクラゲ(代表:丹酌)様の制作された、少女論考察ADV、“だれかのかがみ”の感想を書かせて頂きますね。
本作は地味で内気な恵音が、明るく豪快な性格の棗と云う女性の家に住む事になると云う物語。
主要な登場人物はこの二人だけであり、最初は何処か壁に阻まれている物の、少しずつお互いに打ち解けて行く過程が描かれます。
同作者様の“だれかのよどみ”のように、非常に難解なストーリーとなっておりますが、独特の少女論について作中で深く語られており、全て読み終わった後に、プレイヤーの心に様々な思いを残すような作りになっているように思います。
何処となくヨーロッパ風の世界観が漂う雰囲気で、舞台となる棗の家は、上品であるような、しかし、不気味であるような、まるで隔離された空間であるような魅力的な場所のように思えました。
複雑な物語である上、最後はあっさりと終わってしまうので、少し歯切れが悪く感じられる所がありましたが、敢えてプレイヤーに色々と想像の余地を残しているようにも思えました。
恵音が棗に引き取られた理由であったり、棗が何故この家に住む事になったのか等、それに限りなく近付いているシーンがあるにも関わらず、実はそれ等が明確に言及される事はないと云う、何ともプレイヤー泣かせなトラップが用意されているんですよね。
上記はほんの一例でしかないのですが、ここまで来たら、折角なんだから全てを明かして欲しいと思う方も多いかも知れませんね。
本作でもかなり重要だと思われる、得体の知れない不気味な金切り声の真実こそ、プレイヤーが一番気になる謎だと思うんですが、丁度良い所で終わらせると云う事は、作者様が是非ともプレイヤーに考えて欲しい所だったんだと思う訳です。
私の中でもおぼろげには答えが出ているのですが、それが作者様の意図している物ではないかも知れませんし、勿論受け取る側によって、無数の答えと云う物はあるのでしょうから、クリアした方同士で各自の認識を話し合うのも面白そうだと思いますね。
お風呂後のあのやり取りから、もしかしたらと思ってはいたのですが、棗に変身させられた恵音が自分の姿を見た時のシーンは、かなり衝撃的でしたね。
棗はあの時、恵音から言われた事に対して、軽い憎しみや嫉妬の感情を持ってしまったのか、それとも、単純に恵音を自分の娘のように思ったのか、もしくは過去の自分と重ねてしまったのか、何れにしても、髪まで切ってしまい、予想とは遥かに掛け離れた自分の姿を見て、恵音としては裏切られた気持ちが強かったのではないかなと思いました。
最初、幾ら何でもこれは酷いよなと思いましたからね。
まあ、恵音は恵音でこの時の細やかな復讐の意味も兼ねていたのか、後で飛んでもない事をする訳なのですがね(笑)。
何だか第三者が見ては行けない禁忌のような物であって、見ているこっちも恥ずかしくなってしまうようなシーンでありました。
歳の差百合……と云う訳ではないのですが、まるで姉妹のような、母娘のような、でも、それとはまた違うような、一筋縄では行かない関係や絆を見る事が出来たような気がします。
私は男性ではありますが、一言で言い表す事が難しい少女論について考察出来、また一つ理解を深められたように思います。
クリア後にタイトルを見ると、また本当に良くストーリーに則した言葉だなと思えますよね。
難解な物語が好きな人、女性同士の紡ぐ物語が見たい人、少女論について考察したい人等には、是非とも遊んで頂きたいと思えた作品でした。
それでは、これにて失礼致します。
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