ペイント銃による不殺生、ルールに基づいて読み合う様、突如現れる二人組、正に「戯れ(ゲーム)」。
Ver 1.02
クリア時間 40分 (カイシナリオ)
+33分 (ハルカシナリオ)
+21分 (追加シナリオ)
+24分 (エクストラ1~3)
軍の第一小隊と第二小隊の訓練で戦う様子を
第一小隊隊長、ジャックこと橘海と
第二小隊隊長、ウルフこと大神ハルカの2つの視点で
読み進めていく短編NOV。
本作の訓練というのは
フラグを手に入れて自分の陣地に置くことでポイントが入る、
ペイント銃を使ったサバイバルゲームであり、
ルール上は本物の武器の使用は禁止されている。
ゲーム開始時に小隊内から一人捕虜となる人物を選び
その捕虜は味方に助けられるまで目隠しをされて動けない。
また敵の陣地に捕虜は配置されるが、敵は捕虜を攻撃してはいけない。
ペイント弾で撃たれてインクがついた部分は
撃たれたものとみなし、その部位や武器は使えない。
もちろん、頭や胸にインクがついた場合は戦闘不能であり
その後の行動をとるゾンビ行為は認められない。
狙撃手は開始後30分が経過するまで狙撃できない。
フラグは3つある箱の中の1つに入っていて
それ以外の2つの箱には何か有利になるものが入っているが
それが何かは開けてみるまでは分からない。
本作はこれらのルールに基づいて相手チームがどう動くのかを
読み合う駆け引きを楽しむ面が強い。
最初の段階から誰が捕虜になるかで駆け引きが始まっており
自分たちがフラグを入手していることは
相手には知られていないはずだから守る必要はない、
フラグ以外に箱に入っていた有利になるものは
いったい何が準備されていると考えられるだろうなど
高度な情報戦、心理戦が繰り広げられる。
両腕を撃たれた以上、自分は戦闘不能だと見せかけて
靴に武器を仕込んでいたり、
その辺で拾った空き缶を箱から手に入れたスタングレネードに
見せかけて転がすことでその場をしのいだりなど
相手の読みを考慮して動くので
読んでいて驚かされることも多い。
ルール説明から始まって
人物の位置、校舎の構造は図解され、
撃たれた箇所についてもキチンと立ち絵にインクが反映されるので
本作は視覚的に状況が分かりやすい。
また派手なアクションをやる場面にはスチルが挿入されることも多く
戦闘シーンが勢いがあってなかなかに見てて楽しめるようになっている。
本作は先述したようにあくまでも訓練であり
ルール上は本物の武器は出てこないので、
出てくる武器は基本的に殺傷能力のない偽物ばかりになる。
だけども途中から少し状況が変わってきて
後半では偽物ではなく本物の武器も出てくる。
ここからは緊張感のある展開に変わるのも印象的。
後半から状況が変わるきっかけになる二人組、
彼らもまた、彼らのあるルールに基づいて動いており
最後までプレイしてみると本作はタイトル通り
「戯れ(ゲーム)」だったんだろうなぁと思えるあたりも面白く、
シリアス面だとルールとフェアな状況だったらどうかという話題が
印象に残る。
ところどころコミカルな要素もある。
トイレに入って用を足してる音をまじまじと聞かれていたり
男性なのに女子トイレにいたことをつっこまれたり
最後までプレイしてコミカルなシーンを思い浮かべると
トイレに集中されるあたり、特にトイレはそれの宝庫だったように思う。
クリア後の追加シナリオである人物の視点で
本作を見ることができるのだけど、
小隊長二人の視点だと、口数も少なく不気味な敵役かと思っていたが
彼の視点でプレイしてみるとツッコミ役として優秀なのが分かってくる。
彼にとって想定外のことが起こっていて
その度に内心実は戸惑っているのが非常に面白い。
あと、あの小隊長二人は敵に回すと怖いんだなぁとも。
ルールの下で相手がどう動いてくるかの駆け引きや
戦闘の派手なアクションをノベルで楽しめる一作。
基本シリアスに、時にコミカルに、
いろんな視点で高度な読み合いをする男どもの戦いに
寄り添ってみたい人向け。
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