おとぎ話のようで、恋する男の心情を描いた富山情緒溢れる物語。
ver.2.00
クリア時間 30分(本編)
+6分(富山旅行記)
雪の降る日、人里離れた診療所で
医者のトヤマ先生が語る、とある"病"に侵されて
犯してしまった"罪"の昔話を聞く掌編ADV。
こう書くと田舎で起こった硬派な昔話のような印象を
受けると思うが、身も蓋もない書き方をするのであれば
「医者のトヤマ先生は薬売りの女の子に恋をして
彼女のことばかり考えるようになってしまう。
そして、彼女に会いたいがために医者としてとんでもない事を
始めてしまった」という話である。
つまるところ、本作は男性視点の恋愛話なのだ。
たまたま似たような境遇の女性に出会って、
引き止めたいけど上手く引き止める言葉も思いつかなくて
ずっと彼女のことを考えている。
彼女を呼び出す用事ができたから、ようやく会えたら
彼女の一挙一動を意識してしまってしょうがない。
話を聞けば、どうやら自分のことを尊敬してくれているようだ、
勘違いしてはいけない、これは好意ではないぞと自分に警告する。
しかし、どうにかして彼女の気持ちを確かめられないだろうか。
といった具合の悶々とした男性の恋する気持ちを
詩的表現を挟みながら描写されるゲームである。
自信を持てない男性の心理描写としてリアルに思う。
特に「勘違いしてはいけない、これは好意ではないぞ」あたりは
恋愛感情を抱いた相手の女性に何かしてもらったときに
慎重になるのは経験ある人も多いのではないだろうか。
前半はピュアな話なのだけども、後半になってくると
彼女の顔が表示されなくなり、彼女とのやり取りも少なくなり
彼が彼女に会う口実を作るために、罪深い事を繰り返す。
取次がれなくなったあたりで、彼の行動は
ストーカーじみてきている印象を受けた。
最終的に彼はそのことに関して、最悪の形でその報いを
受けることになる、いや罪を背負うことになるというべきかもしれない。
結末を見たときに、もしかしてこの話って先生の惚気話だったのかなとも
思ったが、どうも彼女はその事実を知らないようなので
複雑でなんともいえない秘密を持った関係になっているようにも思う。
彼女にとっては幸せでも、彼にとっては責任なのかもしれない。
冒頭の彼の父親の話も含め、本作は恋に狂った男の話であり
あくまでも話の中心は男性の心情である。
だから、あまり薬売りの彼女についてそこまで掘り下げられない。
ビジュアルはたしかに可愛らしいのだが
どういう人物かと問われるとそれ以上の説明に困ってしまう。
作中の語で彼女を表現するならきっと"凡庸な女性"だと思う。
そんな"凡庸な女性"であっても本気で恋してしまうのが男性の性というのが
本作のテーマだろう。
文章的な特徴として対句表現が随所に見られる。
"診療所の朝は早い。診療所の外は白い。"
"彼女が膨らませた紙風船。彼女の唇が触れた和紙。"
などがそれにあたる。
それと、病に"侵され"、罪を"犯した"のように
同音異義も意識されていて、言葉遊びが多く
読んでいて面白い表現も多い。
それと題名通り、富山を連想させるような設定が多い。
富山は「雪」が降る場所でもあり、「薬売り」は富山の売薬ネタで
富山の売薬業の基本理念である「先用後利」にも
作中で触れられている。
そして薬を売る際のおまけとして貰えるのが「紙風船」だそうで
富山旅行記の方でも「雪」「紙風船」は出てきたので
このゲームを作って実物を確かめに行ったという流れでできたと思われる。
可愛らしい女の子が目をひき、おとぎ話のようなしっとりとした雰囲気で
シナリオの中心は現実にありそうな、男が女の子に夢中になって暴走するという
対照的な構成が印象的な一作。
恋に慎重な男性や、富山な小ネタを楽しみたい人向け。
面白かったですよ
雪のような綺麗な話かと思えば溶けてドロドロでしたw
ケモナーっぽい世界観だけどファンタジーなのかな
電話がある時代設定なのに単純な薬に頼ってたり奇妙な世界でした
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