短いストーリーの中に感動のある作品でした
短いストーリーの中に感動のある作品でした。
複数のお話が収録されていますので
各々について自分が感じたことを以下に述べさせていただきます。
★lim n→∞
まさに物事を考えるとき無限大に飛ばしたり
0に近似したり、ということをよくやります。
それで少しずつ解を振動的に収束させていくようなやり方が好きです。
わからないから蓋をする、というのも時折耳にします。
地震対策の研究は進んでいるけど津波対策は想定が難しいがゆえに
あまり進んでない、というような話を聞いたことがあります。
そんなことがあったので、読んでいて何だか共感できました。
★死後の栄光
本当に「仰る通りです」という感じです。
家制度があった頃は先祖の行いが子孫の代まで響いたそうですが
今はなかなかそういうこともありません。
ロングレンジな取り組みについてもっとこう巧く
評価されたりモチベーションを維持できるような何かがあると良いものです。
★(3つ目のお話)
日々の行いが無駄かそうでないか、というのは
過去の自分の活動が今の自分に良い影響を与えているか否かではないか、と考えています。
あまり他人は関係なくてあくまで時間軸の違う自分。
10歳の自分の行いが15歳の自分には無意味に思えても
20歳の自分には役に立ったりもする。
過去の行いが100%役に立つ(役に立てなければいけない)とは思いませんが…。
最後にあのような解釈になるのは少々意外で新鮮でした。
人生について考えさせられます
※ネタバレを含みます。
読ませていただきました。それぞれの作品で感想を書いたのでよかったらご覧になってみてください。三作とも短い中にしっかりとテーマが描かれている良作だと感じました。とても楽しませていただきました。
●lim┬(n→∞) n
「無限」という概念に考えを巡らす素敵な作品でした。「人は近似でものを考える。だけどそれは現実を受け止めていない」という言葉にはっとさせられました。物事の本質を真実を見つめることはきっと大変なことで。思考では捉えきれない部分が必ず出てきてしまう。しかし、何も見つめずに諦めてしまうことと、ギリギリまで見つめようと努力してそれでも無理で諦めてしまうこと。同じ諦めでもかなり意味合いが違ってくるのだと思います。その思考は他人から見れば「人生の無駄」と映るのでしょうが、少なくとも主人公にとっては「人生の無駄」ではなかったのではないでしょうか。
●死後の栄光
タイトルのテーマをストレートに扱った、素朴で純粋な作品だと感じました。確かに、〇〇という研究は、彼の死後評価され…という話は科学史や歴史の発見の中でありふれた話なのでしょう。しかし、死ぬまで評価されなかった人物に寄り添うことはなかなかできません。歴史の一コマとして忘れ去られてしまうのでしょう。そこに着目できるのは素晴らしいことだと思います。とても感性の豊かな作者さんなのだと思います。でもやはりこの作品の中で語られる「死後の栄光」を与えられた人々も、他人から見れば「人生の無駄」と思われることへ誇りを持って取り組んでいたのでしょうね。
●人生の無駄
人々が感じる変わらない日々への絶望感、それを見事に言語化した作品でした。人生で大きなことを成し遂げられる人はなかなかいません。ほぼすべての人はいわゆる平凡という日々の中を生きます。そんなありふれた日常に怖くなる瞬間があります。このまま何もしないで終わるのではないかと。木曜日のシーンであったように焦って夢でも追いかけてみたくなります。すごくそういう気持ちは分かります。ノベルゲーム読んでるくらいですしね。この気だるい雰囲気から最後の場面へ、物語は少し希望をのぞかせます。それは絶望にまみれた希望であって、全然綺麗じゃないんです。でも「無駄のない時間は大切過ぎる、自分には勿体ない」と続きます。すごく心が痛くて、やりきれなくて、でも絶望的なまでに正しい。主人公はそれを捉えられているからこそ、人生を終えることができる。しかし、何も知らずに、考えられずに去ってしまう人たちはあまりにも悲しすぎます。だからこそ、「希望」という言葉を使わせてもらいました。久しぶりに人生について考えを巡らすことができました。良い作品をありがとうございました。
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